「こちらのほうでよろしかったでしょうか?」はなぜ間違いなのか?

はじめに

接客業などでよく耳にする「こちらのほうでよろしかったでしょうか?」という表現。
しかし、このフレーズには文法的な誤りが含まれています。一見丁寧に聞こえるものの、正しくは「こちらでよろしいでしょうか?」が適切な表現です。

では、なぜ「よろしかったでしょうか?」が誤った表現とされるのでしょうか?この言葉の間違いの理由を詳しく解説していきます。

「よろしかった」の誤用

「よろしかったでしょうか?」の問題点の一つは、「よろしかった」という表現にあります。
「よろしい」は「よい」を丁寧に言い換えたものであり、現在形として正しく使われる言葉です。

しかし、「よろしかった」は「よろしい」の過去形です。
そのため、過去の出来事を確認する場合には適切ですが、現在の状況や未来の判断を求める文脈では不自然になります。

例えば、次のような場面を考えてみましょう。

  • 過去の出来事について確認する場合:「先ほどのご案内でよろしかったでしょうか?」(問題なし)
  • 現在進行中の事柄に対して:「お席はこちらのほうでよろしかったでしょうか?」(不自然)

後者のように、今まさに確認する場面で過去形を使うと、時間軸がずれてしまうため違和感が生じます。

「こちらのほうで」の冗長性

もう一つの問題点は、「こちらのほうで」という表現です。
「ほう」をつけることで丁寧に聞こえると思われがちですが、実際には冗長な表現になっています。

「ほう」は比較をする際に使われる言葉であり、選択肢がある場合に適しています。
しかし、選択肢がない状況で「こちらのほうで」と言うのは無意味な強調になってしまいます。

例えば、「こちらでよろしいでしょうか?」とすることで、より自然で簡潔な表現になります。

正しい表現を使うには

接客業やビジネスシーンでは、適切な敬語を使うことが重要です。
「よろしかったでしょうか?」ではなく、次のような表現を使うとよいでしょう。

  • 「こちらでよろしいでしょうか?」
  • 「こちらで問題ございませんか?」
  • 「この内容で大丈夫でしょうか?」

こうした表現にすることで、過去形の誤用や冗長な表現を避け、より洗練された敬語を使うことができます。

まとめ

「こちらのほうでよろしかったでしょうか?」は、過去形の「よろしかった」を現在の事柄に使ってしまっている点、そして「こちらのほうで」という冗長な表現が含まれている点で間違いとされています。

正しい言葉遣いを意識することで、より自然で伝わりやすい日本語を使うことができます。ビジネスシーンや接客時には、「こちらでよろしいでしょうか?」と簡潔に伝えることで、相手にとっても理解しやすくなります。

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