はじめに
「小学生・中学生・大学生はサイズなのに、高校生だけ高さを表しているのはなぜ?」と疑問に思ったことはありませんか?
たしかに、直感的に「小・中・大」は学校の規模や成長段階を表しているように感じますが、「高」だけは異質な存在に見えます。
この違いには、日本の教育制度の歴史や言葉の使われ方が関係しています。
本記事では、その背景を掘り下げ、なぜ高校生だけが「高」なのかを探っていきましょう。
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「小・中・大」はサイズを基準にした名称
日本の教育制度では、「小学生」「中学生」「大学生」という言葉は、それぞれの学校段階を表しています。
このネーミングには、成長に伴う順番や学校の規模が反映されています。
- 小学校(初等教育) → 小学生
- 基礎的な教育を受ける段階で、「小さな子ども」が通う。
- 中学校(中等教育前半) → 中学生
- 小学校よりも進んだ教育を受けるが、まだ中等段階であることを示す。
- 高等学校(中等教育後半) → 高校生
- 中等教育の後半部分を指すため、「高等(=レベルが高い)」という言葉が使われています。
- 大学(高等教育) → 大学生
- 学問の最上位にあたるため「大」と表現される。
このように、「小・中・大」は、教育の段階や学校の規模感を表すサイズ的な意味合いを持っているのです。
一方で、「高校生」だけは「高」という言葉を使っています。これは、日本の教育制度の歴史的な背景が関係しています。
「高校生」だけ「高さ」を示す理由は?
高等学校の成り立ち
戦前の日本では、現在の高校に相当する教育機関が 旧制中学 と 旧制高校 に分かれていました。
- 旧制中学(12~17歳)
- 現在の中学~高校に相当。
- 旧制高校(17~20歳)
- 現在の大学の教養課程に相当。
戦後、新しい教育制度(6・3・3・4制)が導入され、「旧制中学」と「旧制高校」が統合されて 「高等学校」 となりました。
しかし、その名残で「高等」という言葉が残ったため、現在でも「高校生」と呼ばれています。
「高等教育」との混乱
さらにややこしいのが「高等教育」という言葉の存在です。
一般的に「高等教育」は 大学以上の教育(専門学校・短大・大学・大学院など) を指します。
つまり、高校は 「高等学校」だけど高等教育ではない」 という、ちょっと混乱しやすい構造になっています。
このようなズレが生じたのは、戦後の教育改革で「高校」が「高等学校」と命名されたためです。
もし今の時代に新しく制度を作るとしたら、「後期中学校」や「セカンダリースクール」など、もっと直感的な名称がついていたかもしれません。
もし名前を新しく決めるなら?
「高校生」という言葉が歴史的な名残であると考えると、もし現在の教育制度をゼロから設計するなら、違う名称になっていた可能性があります。
例えば、
- 「前期中等学校」「後期中等学校」
- 英語の「Lower Secondary School」「Upper Secondary School」に近い。
- 「ハイスクール」
- 英語圏では一般的な名称。
- 「セカンダリースクール」
- イギリスやオーストラリアのように「中学・高校」を統一。
現在、日本では英語のカタカナ表記が一般的になっているので、「ミドルスクール」「ハイスクール」といった名称が使われていた可能性もありますね。
まとめ
「高校生」だけが「高」という文字を使っている理由は、戦前の教育制度の名残 によるものです。
もともと「旧制高校」があったため、その名称が引き継がれ、「高等学校」として残りました。一方で、「小・中・大」は学校の順序や規模を表しており、ネーミングの基準が異なっています。
もし今、教育制度をゼロから設計するなら「高校生」という名称は使われず、より直感的な名前になっていたかもしれません。
しかし、長年使われてきた名称は社会に根付いており、今さら変えるのは難しいでしょう。
このように、普段何気なく使っている言葉の背景を知ると、新たな視点で教育制度を見直すきっかけになりますね。