はじめに
安楽死は、耐えがたい苦痛から解放されるために、自らの意思で死を選ぶ方法として議論され続けています。
しかし、安楽死が認められている国と、違法とされている国では大きな違いがあります。
本記事では、安楽死の方法、安楽死が可能な国、日本で安楽死が合法とされない理由について解説します。

安楽死とは?
安楽死(Euthanasia)とは、耐えがたい苦痛に苦しむ患者が、自らの意思または医師の介助によって命を絶つ行為のことを指します。
安楽死には以下の2種類があります。
- 積極的安楽死
- 医師が薬物を投与し、患者の命を終わらせる。
- 消極的安楽死
- 延命治療を中止し、自然死を迎える。
また、患者自身が自らの意思で薬物を服用して死を迎える「自殺幇助」も安楽死の一形態とされています。
安楽死が可能な国
安楽死が合法化されている国はいくつか存在します。
国名 | 安楽死の種類 | 条件 |
---|---|---|
オランダ | 積極的安楽死・自殺幇助 | 医師の判断のもとで許可 |
ベルギー | 積極的安楽死 | 年齢制限なし(子どもも対象) |
スイス | 自殺幇助 | 非営利団体の介助が可能 |
カナダ | 医療的幇助死 | 余命が短い患者が対象 |
コロンビア | 積極的安楽死 | 厳しい基準のもと許可 |
ルクセンブルク | 積極的安楽死 | 医師の判断で許可 |
アメリカ(特定の州) | 自殺幇助 | オレゴン州、ワシントン州など |
スイスでは、「ディグニタス(Dignitas)」という団体が外国人の自殺幇助を受け入れており、世界中から安楽死を求める人々が訪れています。
日本で安楽死が合法ではない理由
日本では安楽死は違法とされています。その理由は以下の通りです。
刑法による規制
- 日本の刑法第202条(嘱託殺人・同意殺人)では、「本人の同意があっても殺害すれば罪に問われる」と明記。
- 医師が安楽死を行うと「殺人罪」や「嘱託殺人罪」に問われる可能性がある。
宗教・倫理的な問題
- 日本では「命は天から与えられたものであり、人間が終わらせるべきではない」という価値観が強い。
- 仏教の影響もあり、「自然に死を迎えるべき」と考える傾向がある。
医療現場での議論の不足
- 「終末期医療」の概念は発展してきたが、安楽死の議論は進んでいない。
- 「延命治療をしない選択」と「積極的安楽死」の違いが曖昧になりやすい。
社会的な混乱を懸念
- 安楽死が合法化されると、「経済的理由で命を絶たせる」などの悪用リスクが生じる可能性がある。
- 医療費負担の軽減を目的とした安楽死が問題視される恐れがある。
日本における安楽死の代替策
日本では、安楽死が認められていないため、以下のような選択肢が考えられます。
緩和ケア・ホスピス
- 痛みを和らげる緩和ケアを受けながら、最期を迎える。
- 苦痛を取り除く医療が充実してきており、安楽死の代替手段となる。
尊厳死(延命治療の拒否)
- 患者の意思に基づいて延命治療を行わない選択(尊厳死)が可能。
- 日本では「事前指示書(リビング・ウィル)」を作成し、自分の意思を明確にすることが重要。
まとめ
安楽死は、世界各国で認められている国と禁止されている国があり、日本では合法化されていないのが現状です。
- オランダ、ベルギー、スイス、カナダなどでは合法。
- 日本では刑法、倫理観、社会的混乱の懸念から禁止されている。
- 日本では緩和ケアや尊厳死が代替手段として選択されることが多い。
今後、日本でも安楽死について議論が進む可能性がありますが、現時点では慎重な対応が求められています。